会社設立時の株主構成の決め方のコツは議決権3分の2の確保

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議決権とは

議決権とは、株主が会社の経営や重要な決定に対して発言し、意思決定に参加する権利を指します。株式会社の株主は、出資の対価として株式を所有することによって議決権を保有します。

 議決権は株主総会において行使されます。株主総会は、株主が集まり重要な議案や決議事項について議論し、投票を行う場です。株主は自身の株式の保有割合に応じて議決権を有し、議案に対する賛成・反対などの意見を示すことができます。

 起業をする際、ビジネスパートナーから多くの出資を受けられることは資金的に有り難いものですが、自分以外にも議決権を持たれるということを意味し、今後の会社経営の方針に重要な影響を与えますので、出資の対価として交付される株式の保有割合は慎重に決定することが重要です。

 では、議決権保有割合に応じて、どのような権利が発生するのかを具体的に見てきましょう。

議決権保有割合ごとの株主の権利

 ここではすべての株式が普通株式の非公開会社の場合を前提とし、議決権保有割合ごとの主な権利をご紹介します。

  • 議決権保有割合1%以上(または300個以上)

 議決権保有割合が1%以上、または300個以上の議決権を株主が持っている場合、株主総会での株主提案権があります。

 株主提案権とは、株主総会の開催に際して、この議案も審議して欲しいと提案する権利のことを指します。

  • 議決権保有割合3%以上

 議決権保有割合が3%以上の場合、会計帳簿等閲覧請求権があります。会社に対して会計帳簿を見せるように請求できる権利であり、経営状態をいつでも把握できるということを指します。

 さらに、総会招集請求権や取締役等の解任請求権などの行使することも可能となります。

  • 議決権保有割合10%以上

議決権保有割合が10%以上で、解散請求権などがあります。これは裁判所に会社の解散を訴えることができる権利です。

  • 議決権保有割合1/3超

議決権保有割合が1/3を超えると、「株主総会の特別決議」を単独で阻止することが可能です。つまり、議決権保有割合が1/3を超える株主の同意がなければ、特別決議は通らないことになるため、議決権保有割合1/3超というのは非常に重要な数字ということになります。

  • 議決権保有割合50%以上

議決権保有割合が50%以上の場合、「株主総会の普通決議」を単独で阻止することが可能です。

  • 議決権保有割合50%超

議決権保有割合が50%を超えている場合、「株主総会の普通決議」を単独で成立させることが可能です。

  • 議決権保有割合2/3超

議決権保有割合が議決権保有割合を超えていると、「株主総会の特別決議」を単独で成立させることが可能です。

議決権保有割合に応じた株主総会の決議

  • 普通決議

 普通決議とは、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の過半数をもって行われる決議です。

  ・取締役、会計参与、監査役、会計監査人の選任

  ・取締役、会計参与の解任

  ・役員の報酬等の決定

  ・剰余金の配当

  ・合意による自己株式の取得

  ・定時株主総会において欠損の額を超えない範囲で決定する資本金の額の減少

  ・準備金の額の減少

  ・剰余金の額の減少による資本金・資本準備金の増加

  ・剰余金についてのその他の処分

  ・取締役会非設置会社における取締役の競業取引等の承認

  • 特別決議

 特別決議とは、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上に当たる多数をもって行われる決議です。

  ・監査役の解任

  ・定款変更

  ・譲渡制限株式の買取

  ・特定の株主からの自己株式取得に関する事項の決定

  ・全部取得条項付種類株式取得

  ・譲渡制限株主の相続人に対する売渡しの請求

  ・株式の併合

  ・募集株式または募集新株予約権の発行のための募集事項の決定

  ・役員の責任の一部免除

  ・資本金の額の減少

  ・事業譲渡の承認

  ・解散

  ・解散した会社の継続

  ・合併、会社分割、株式交付等の承認

【ポイント】議決権保有割合3分の2を確保しておくことで、会社経営の大部分をコントロールできる!

議決権は確保したいが、自分だけで出資金が用意できない場合はどうしたら良いか

 配当を優先するなどの条件を付けた議決権のない「種類株式」を発行し、この株式をビジネスパートナーに引き受けて出資に応じてもらう方法が考えられます。

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この記事を書いた人

山添健志のアバター 山添健志 佐井司法書士法人副所長

立命館大学 法学部卒業後 2013年司法書士登録(大阪司法書士会)

中小企業診断士の資格も保有し経営と企業法務の専門性で様々な企業のサポートをしています。

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